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仮面ライダー555 雑感 


2004/1/19

 迷走すること自体を楽しめと言わんばかりの週刊伏線ばら撒き型エンタテイメント仮面ライダー555も遂に最終回を迎えました。
 あー、やっぱりまとめきれなかったか。全体的に言葉の足りない状態のまま終わってしまったな。設定で風呂敷を広げてしかも回収する気がないのなら、人物だけはちゃんと終わらせてくれてもいいのに。楽しんだけどね。

 平成ライダーは全般に言えることだけど、仮面ライダーという枠組みで出来ないことはもう止めるべきでは。ストーリーを描きたいのはよく分かるんだけど、アギト以降、ライダー対怪人のシーンが完全に蛇足にしかなってないんだもの。ライダーを登場させなきゃいけないので仕方なく怪人を投入してるだけなんだよな。本筋の方ではオルフェノクになってしまった人間の苦悩や葛藤を描写してんのに、一話限りのオルフェノクは問答無用で倒されちゃうのか。それはどうも釈然としないものがないか。
 そもそもが仮面ライダーを活躍させることが前提の枠組みなんだから、それ以外のことがやりたいのなら違う枠組みを考えるべきだろう。怪人を倒す為に変身するのではないライダーとか。なんだろう。人命救助? ……うーん。
 いや、別にドラマとして完結してくれればそれでいいんだけど。本来のフォーマットを崩してまでドラマに重点を置いた挙句に最終回であんなぶん投げ方されるんでは。フツーに悪の組織と戦うライダーじゃなんでダメなの? と疑問を投げかけたくもなる。


ストーリー

 個人的に一番余計だと思うのは「オルフェノクの王」なのだが。というより王の覚醒がなければオルフェノクは滅ぶ云々という設定。あれのおかげでそれぞれが物語の結末を見失ってしまった。示されるべきはオルフェノクの末路ではなく人間との共存の可能性ではなかったかなぁ。で、それは主人公たる巧がそうしてきたようにオルフェノクであることを忘れて生きる、で良かったんだと思う。そこでオルフェノクによる支配を試みようとした薔薇社長が人間滅亡の切り札として王を覚醒させ、「人間として生きる道」を守りたいオルフェノクと「人間」を守りたいライダー、そして両方の共存を願う巧が遂に手を取り合って強敵へ立ち向かう、と。ほらスッキリ。ダメか。

 根本的に「オルフェノクの王」って何? 王が覚醒すると人間はどうして滅ぶんだ? 覚醒しないと本当にオルフェノクは滅ぶのか? 何が起きるのか木場はちゃんと把握した上で行動してるの? ただ結花の死に動揺して見境がなくなってるだけじゃないんだろうな? それに人間の滅亡なんてグローバルな仕返しを考えてしまうほど木場にとって結花は大事な人だったのか? 考えてみれば巧が自らの死と引替えにしても守りたい「人間」って真理や啓太郎だと思って本当に良かったのかな? コイツラの絆ってそんなに深かった? それに「人間」を救うことで結果的に滅ぶ「オルフェノク」の木場や結花についてはどう思っているんだ? 後半あまり語られなくなったけど、オルフェノクになっちゃってもそれはそれとしてフツーに暮らしてる人も結構いるんじゃないのか? それも相当な数いたりするんじゃないか?
 ……分からん。分からんのにどうしてこの人達はこんなに戦えるんだ? どうして誰もかれも目先の標的に全力を注ぐばかりで真実に辿り着こうとするヤツがいないの? ???

 どうしてもオルフェノクの滅びという設定が必要なら、最後の最後で王を倒した後、巧の死まで描かれないと終われないだろう。王との決戦に勝利はしたものの満身創痍の巧。そして駆け寄る真理と啓太郎。だが力尽きた巧は二人の手の中で灰になっていく。この時点で二人とも「王を倒したらオルフェノク滅亡」の話を知らないほうがグー。たっくんどうしてそんな大事なこと黙ってたのさ!俺は人間として死にたかったんだ。人間を守って。それが俺の夢……。(←主題らしきもの)今度生まれ変わったら天使のようなロボットに。リルルー! ああ。どうしようこんなラストだったら俺泣いてたかも。

 色々気になる部分はあれど中盤は確実に面白かったんだよ。それなのにラストでこれかってのがどうしても。どうしても。


デザインとか

 慣れってのは恐ろしいもので、最初見た時のファイズの顔はオーレッドの顔より衝撃的だったんだけど、今見ると格好良くすら感ずる。人間の適応能力ってすげぇ。映像的には闇映えするラインの描写とか。あれは素直に格好良い。龍騎に比べると格段に買ったフィギュアの数は多かったのだった。ただファイズに対するとカイザ、デルタはどうも野暮ったさが目立つのであまり好きになれなかったけども。 オルフェノク群はモノクロを基調にした純粋なシルエットのみのデザインでこれも秀逸。色調を排したことが生物感を希薄にしてオルフェノクという特異な存在を際立たせたのではないかと勝手に分析。素材の関係なのかなんなのか、全般的に骨太な……いや率直に言えば太めに見えるのが難点か。特に結花オルフェ。これが鶴か。鶴なのか。あとせっかくモチーフがあってもそれに関連した攻撃をほとんどしないのが残念。姿形が変化するだけで不気味な特殊攻撃なんてほとんど持ってないし。透明になるとか液体になるとか体中からツクシが生えるとか。それがつまらん。勿体無い。でも豪快に変形するメカ群は映像共に素晴らしい出来映えでありました。サイドバッシャーなんて日曜8時の特撮もここまでやるぞ、ってな底力がひしひしと。オートバジンいいなぁ。健気で。ラスの扱いはあんまりだけど。


キャラクター

 誰が好きかと言われればやはり草加が。最後まで主義が一貫していた彼は停滞しがちなストーリーを良くも悪くも牽引していくパワーがあったな。悪人だったけど。最終回まで生きていればきっとあんなラストにさせなかっただろうという期待を込めて。
 巧に関してはとにかくコミュニケ下手っつーか何つーか。ちゃんと誤解は解け! 話を振ったら最後まで説明しろ! 言い訳することを覚えろ!
 木場は……ストーリー的に彼が昔の恋人や従兄弟を葬った件に付いては既に免罪になってると考えていいのか? 作中では彼が言うほどオルフェノクへの人間の対応って間違ってないと思うので、最終的にオルフェ王擁護に回るその行動はどうも直情的に判断したわがままにしか見えなかったりするのだな。そうなっても仕方ないなという共感を呼ばない。そもそもオルフェノクでも静かに暮らしたいというのはオルフェノクとして罪を犯してない人間にしか許されない望みなのでは。ああそうか。初めから共存するなんてラストに落ち着くはずは無かったのか……。


 総括

 やっぱりどんな終わりでもいいから結論を出して欲しかったな。取ってつけたように夢を持て夢を持てと言わせてみたところで一体主人公たる巧はどこでソレを示したんだ。世界中の人を幸せにすることってつまりオルフェノクが滅ぶことなんでしょーか。逆に夢も希望もないのでは。うーん。ストーリー補完ビデオでも出してくれんかな。